1.自己紹介

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1.自己紹介

平生回天基地司令塔前

太平洋戦争の末期、戦局の逆転を狙って人間魚雷「回天」が開発されました。

それは、若者達の命を犠牲にして敵艦艇を撃沈するという必死の特攻兵器。


その訓練・出撃基地が山口県の大津島、光、そして平生に設置されていました。

平生の基地では、多くの若者達が訓練に明け暮れ訓練中の事故や出撃、または自決によって9名が亡くなっています。その訓練に参加し、亡くなった戦友と共に青春を過ごした、平生基地所属の元搭乗員3名の皆さん(平生回天会)から、お話を聞くことができました。


これは、今まであまり語られることのなかった、元搭乗員たちの当時の記憶、その後の人生、そして、今の若者に宛てたメッセージです。

~自己紹介と当時の役割、年齢などお願いします。~

山本 修一

山本 修一(やまもと しゅういち)
富山県在住。
平生回天会会長。
操縦技術を教える指導官だった。
高校校長として退職。




(山本)

山本修一と申します。当時は宮下修一です。後で姓が変わり、山本になりました。

当時平生に居りました時の年齢は、数えで23歳でした。

海軍中尉で、回天搭乗員として搭乗訓練を15回ぐらいやりました。


当時は、技量の上手な人を集中的に訓練していました。

というのも、回天は昭和19年8月に兵器として認められ、その後、年間1,000台くらいを量産する予定でした。

でも生産が間に合わなかったので、搭乗員だけはたくさんいても、回天は少なかったんです。だいたい20~30回訓練すると出撃しました。


ところが、私はちょっと失敗しまして、指導官という役に回されました。

回天のメカニズムや操縦法、時には回天に同乗して実際にやり方を指導していました。そしてそのまま終戦に至りました。


ここにおられる中川さんや林さんは優秀でしたから、間もなく出撃、という運びになったわけです。

中川 荘治

中川 荘冶(なかがわ そうじ)
大阪府在住。
平生回天会事務局長。
予科練習生を経て回天隊へ。出撃命令を受けた。
戦後は会社役員。




(中川)

昭和2年9月30日生まれです。終戦の昭和20年8月15日には、17歳と10ヶ月でした。


予科練習生で、飛行機に乗ることが目的でしたが、飛行機がないため金物、つまり回天に回されました。

一等飛行兵曹でした。


平生に参りましたのは、昭和20年の2月の末です。

まだこれから平生基地をみんなで作ろうというときでした。

作業をした記憶があります。

正式な平生突撃隊の開隊は3月1日だったと思います。

それから終戦まで居りました。


記憶が定かではありませんが、8月4日には、出撃が決まっていました。伊36潜水艦で出撃する6人に選ばれていました。

でも、伊36潜水艦が前回の作戦で損傷していたので、出撃は延期となり、呉のドッグで修理することになったのです。

修理が終わってドッグから出たのは8月10日。

それから平生に向かったのですが、途中浅瀬なので潜航しないで、航行していたところをアメリカ軍のグラマン戦闘機から機銃掃射を受け、艦橋を破壊され再び修理することになりました。その間に終戦となり、かろうじて生き延びました。


もし、潜水艦が攻撃を受けずに8月10日に平生に来ていたら、翌11日には出撃していたでしょう。

目的地は沖縄周辺だったと思います。

12日頃には敵艦に突っ込んでいたのではないでしょうか。


林 徳次

林 徳次(はやし とくじ)
大阪府在住。
平生回天会事務局長。
予科練習生を経て回天隊へ。出撃命令を受けた。戦後は公務員。




(林)

林徳治です。終戦当時の年齢は19歳、数えで20歳です。

階級は中川さんと同じ海軍一等飛行兵曹でした。


後で知りましたが、奈良の予科練の畳の兵舎にいた頃は、中川さんの隣の兵舎だったようです。

私もやはり乗る飛行機がなく、色々な基地を転々とした後、平生に来ました。私が3班、中川さんが4班。山本さんが指導官という間柄です。


私はこのお二人とは大変縁が深いのです。

山本さんからは、回天に同乗してもらって指導を受けたことがあります。

中川さんは8月4日の出撃が決まっていましたが、それを控えた7月24日に回天が岩と衝突する事故に遭い、額に大怪我を負われたのです。

大変な重体と聞かされました。そこで、代わりに私が出撃者として指名されたのです。


夜中、副長(少佐)の部屋の前の廊下に呼ばれ、「某兵曹が負傷した。彼に代わって貴様が出撃準備せよ。」と言われたのを憶えています。

ところが、8月4日潜水艦に乗るとき、中川さんは這い出してきて、鉢巻をして乗り込んできました。

ピンチヒッターの私の出撃は、それで自然消滅したわけです。

その後は、中川さんのお話の通りです。


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